【驚愕】慶良間ではウミガメに触れていけないという新ルールと昔話
2014年(平成26年)3月5日には諸島および周辺海域が慶良間諸島国立公園に指定された事により色々とルールが増えたようだ。あまり詳しい事は分からないのだが、島で聞いたのはウミガメには触ってはいけないという事だった。
慶良間ではウミガメに触れていけない
国定公園になったからではなく、強化されたと言った感じ。どちらにしてもウミガメに触るの事が一体何に影響を及ぼしているのが分からなかったので、「なんで?」と訪ねた所、色の黒いにーにーは気まずそうだった。
今回はウミガメ触って良いかいけないかではない
ウミガメに触るなと言えばそりゃ触らないが、20年前から慶良間の海に慣れ親しんだ僕からしてみると不思議でならない。
なぜなら20年前はウミガメは乗り物だったからだ。
ウミガメが乗り物だった頃
ウミガメに触れる。ウミガメと泳ぐと言った事は20年前の慶良間では珍しい事ではなかった。と言うか本島でも簡単にウミガメと泳ぐ事は出来た。僕は国頭の海に良く行っていたのだが、当時のいちゃんだビーチ(なもなきビーチ)に「亀の浜」と名付ける程亀に会えるビーチがあった。
国頭にある亀の浜は強者どもの巣窟
この亀の浜は名護市から車で50分位の所にあるのだが、大自然に抱かれたもんのすごい野生のビーチだった。120㎝以上のバラクーダが泳ぎ、3m以上のホワイトチップが当然のように泳いでいた。100㎝越えのGT(ロウニンアジ)を狙って僕はこの海を命がけで開拓していた。
亀いすぎ!
この強固な海をなぜサメの浜とか突撃魚の浜などと名付けなかったかと言うと、めちゃんこ亀がいるからだった。
先ず太ももくらいの水深まで歩いて、泳げる深さになるとフィンを履いて泳ぎだすのだが、もうこの時点でウミガメが僕の周りを2匹泳いでいるのだ。森の中の木を避けて通るかの様に平然と二手に分かれて僕を通り過ぎていくのだ。
海に立って自分の右と左を畳半分位の亀の甲羅がすーっと泳いで行くのだ。これは感動と言うよりもなかなか怖かった。
見分けがつかないので重複している可能性大
水面移動を開始すると直ぐに新手の亀が出て来る。固そうなくちばしでサンゴをガリガリと削り取りながら何かを食べている。
「カメだ・・こえーな・・」
コチラも畳半分位の甲羅を持ったウミガメさん。チラっとこっちを見たりするので仕方なく迂回して泳ぐ。
すると向きを変えた先にまたウミガメがいるのだ。しかも2匹。ん?最初のやつか?と思いつつ「もうウミガメいすぎだろ!」ってシュノーケル咥えながら一人で突っ込んだりしていた。
慶良間のウミガメは人慣れしている
こんな感じで水深2mにも満たない海でウミガメは5~10匹位簡単に見る事が出来た。ただ慶良間のウミガメと亀の浜のウミガメの決定的な違いは人に慣れているかどうかだった。
慶良間のウミガメはとても人に慣れていて、決して急いで逃げたりはしなかった。
ウミガメに乗って遊んでいた頃
慶良間のウミガメは本当に懐っこく、こちらから近づいても嫌がったりせずゆったりと泳ぎその美しい姿を惜しむことなく見せてくれた。
それはまるで水中で巨大なウミガメが自分の事を誘っているような気がするのだ。
「ここまでおいで」とか「もっとリラックスして」「こうやって泳ぐんだ」と言って身振り手振りで僕に話しかけてくるようなのだ。
ウミガメの操縦法
さぁ段々内容がやばくなってきた、まぁ20年も前の話だから時効って事で保全に励む人には許してもらいたい。
ウミガメはくっつきすぎるのを嫌う
ウミガメの操縦方法は甲羅を掴む。上から見て頭のある所の右と左をわしっと掴むのだが、この時緊張して力を入れすぎると甲羅を自分の胸の方に引き付ける事になり、ウミガメは密接する事を嫌うので途端にむんっ!と力を入れて泳ぎだし振り落とされてしまう。
ウミガメは沈めない、引き寄せない、引っ張られる事
くっつきすぎると逃げてしまうが、手を伸ばして下に沈めたりしてもウミガメは嫌がる。兎に角ウミガメの動きに自分が合わせなければいけないので、リラックスして引っ張ってもらうイメージが大事だ。
その為には亀と同じ速度で泳ぎ、調和がとれた所で泳ぐのをやめて体を預ける必要がある。最初から身を任せると確実にブレーキになるのでウミガメさんはムカっときてむんっ!と勢いよく泳いで逃げてしまう。
ウミガメを自分の行きたい方向に行かせる
基本的にはウミガメの行く所に連れて行かれる感じなのだが、慣れてくるとウミガメを操縦する事も出来る。海中で野生の生き物を自分の意のままに操るというのは物凄い感動で、この域に到達するのはハッキリ言ってかなり難しい。
ウミガメの曲げ方
右に曲がりたいなら右の甲羅を下げ、左の甲羅を引き寄せる。ただ甲羅を下げただけでは曲がらない、もう一方を寄せるのがコツだ。
ただ前述したようにウミガメは過度にくっつく事と押される事を嫌うので、これも海流に沿って自然と傾けるようにしなければならない。そして不快に思われないように自分でも少し泳いで、ウミガメ様の機嫌を損ねないようにしなければならない。
まぁこんな所に行く前に大体の人は息が切れてしまう。
ウミガメは怒らせない方が良い
今回の旅で大先輩と「なんかウミガメ触っちゃダメなんですね」って話をしたら「ウミガメは乗り物なのに」と言っていた。「ですよねー、一体何に乗れっていうんですんかねー」という話を嫁に話したら「ウミガメは乗り物じゃないよ、別に海の生き物に乗ろうとしなくて良いし、あんたもだけど先輩もおかしいよ」と言われてしまった。
しかし大先輩も子供の頃はウミガメに乗って遊んでいた。だが、子供がウミガメの事をあれこれ考えて乗っていたわけではないので、めちゃくちゃ怒ったウミガメが一度本気で泳いだことがあり、その時の速さがものすごく振り落とされ、恐怖を感じたそうだ。
「本気にさせたらヤバイからねー、怒らせない方がいーよ、ウミガメは」と言っていた。
沖縄の一部の子供にとってウミガメは乗り物だったのだ。
慶良間はまだまだウミガメに簡単に会える
今回阿真ビーチで泳いでいたらウミガメが現れた。水深2mで、浜から10mくらいの所だった。とても小さく僕がこれまで見てきたウミガメの中で最少だった。
触ってはいけないと分かりつつ少し手を伸ばしたらあっという間に遠ざかってしまった。あの頃の余裕がないのだろう、久しぶりのウミガメに興奮していたのも確かだ。
まとめ
僕が若い頃沖縄の海はウミガメで溢れていた。ウミガメに関わらずサンゴもサザエもクブシミも伊勢エビもたくさんいた。
でもその数はどんどん減ってきて、漁場に溢れかえっていた海の生き物が全くいなくなってしまった場所もある。
環境保全の因果関係は予想の域を超えている可能性もあるが、最前線で行動を起こしている人たちをリスペクトする事は大事だ。あの頃は思い出として、美しい慶良間の海と多様な生物の楽園であり続ける方が大切な事だと思う。