空き家で猪の解体所(食肉処理施設)を作ろうと思い保健所に行ってきた

新たに解体所(食肉処理施設)を建設しようとする人には関係ない話なので先に言っておく。

近所に元鮮魚店の空き家があり、この物件を解体所(食肉処理施設) に出来ないかと考えたのが事の始まりだ。すでに出来上がっている建物の構造で許可を得る為には最低限どうすれば良いかと言うのが今回のテーマ。

コストをかけずに解体所(食肉処理施設)を作るつもりなので、改築費用などが嵩む場合には実行しないつもり。

では早速保健所の担当者から聞いてきた話をまとめてみよう。

先ず解体所(食肉処理施設)で重要なのは2つ。

1 3つの部屋(とさつ放血室、解体処理室、加工作業室)

処理施設で必ず必要になるのがこの3部屋。

野生獣肉を料理できる状態にするには、3つの部屋を通過しそれぞれの部屋での作業を行っていく事になる。この3つの部屋はそれぞれ汚染レベルが高から低へと下がっていく。順番は以下。

1:とさつ放血室 (洗浄と血抜きを行う部屋)汚染レベル高

血抜きと洗浄を行う部屋。山中で捕獲した獲物は現場で止め刺し、或いは生きたまま軽トラックなどに乗せられ解体所に辿り着く。体中泥まみれで暴れた時に出来た傷や、止め刺しを行った場合には刺し傷にも汚れがいっぱいついている状態。

2:解体処理室(皮を剥ぎ枝肉にする) 汚染レベル中

洗浄された獲物は内臓を摘出され皮を剥ぎ取る。この時内臓を破ってしまったり、皮を剥ぐ時に露出した皮下肉に獲物の体毛等が付着すると衛生上良くない。

3:加工作業室(冷蔵・加工) 汚染レベル低

枝肉になったお肉は小分け・包装され冷凍室へと運ばれる。この時点でお肉が汚れる事は殆どない。

2 導線と搬入出口による制約条件

3つの部屋で各工程を行う際、お肉も人も導線に逆らってはならない。つまり
1 ~3の部屋への移動は一方通行になっていないといけない。そしてこの1~3の導線の最初と最後が搬入口と搬出口になるのだ。

つまり、搬入口に面した部屋は”1とさつ放血室”、搬出口に面した部屋は”3加工作業室 ”という制約条件となる。(入り口を作り直すって結構大変だと思うのでここを制約条件にした)

逆走禁止部屋の順番が制約条件である。

例)OKな導線


ではこれを理解した上で僕が見つけた物件を検証してみる。

先に説明したように搬入口と搬出口を決める事で ”1とさつ放血室”と”3加工作業室 ” が決まる。図面上搬入口と搬出口になるのは勝手口と玄関。なのでこの2つの出入り口に面した部屋がそれぞれ1or3の部屋となる。

1と3の部屋が決まれば次に決めなければならないのが2の部屋だ。制約条件に当てはめて残った部屋から2を選ぶのだが・・・・・

これだと2の部屋から3の部屋に行く時に1の部屋を通過するので制約条件の逆走禁止 に引っかかってしまう。 1の部屋と3の部屋を入れ替えても1の部屋から2の部屋に行く時に逆走が起きてしまう。

つまりこの物件をこのまま処理施設にするのは構造上不可能という事になる。この時点でこのままでは使えない という事が確定したので、後はお金をかけて改築するかどうかの判断になる。 まぁでもそんなに大した問題ではないだろう、要するに2から3に行く時1を通らない作りにすれば良いのだから。

今回保健所の人に聞いた構造上の制約条件でガイドラインに詳細が乗っていない大事な所はこんな所だと思う。後は一般常識的な感覚で「そう言われればそうですね」っていう感じだった。(例えば更衣室は1番の前に入れる場所だとか、全室排水が良く、清掃しやすい材料で作られているかとか)

さて多少のお金をかければ恐らく稼働できるだろうこの物件。海辺で見晴らしも良く敷地もめちゃ広い。大家さんもぜひ借りてほしい、出来れば買ってほしいと言われている物件だ。僕はお金をかけずに出来るかなぁと思ったのでここで止めるが、解体所が近所に出来れば積極的に品質の良い猪を搬入するだろう。

誰か作らんかなぁ